緑黄色社会「Mela!」は意外とコード進行が複雑!? 音楽理論的に分析してみた

曲分析

このブログでは、J-popの様々な名曲を、コード、メロディー、リズム、歌詞などのいろいろな観点から分析しています。

今回は、緑黄色社会の「Mela!」という曲を分析していきます。

曲紹介

基本情報

2020年4月13日リリース。「あなたはあなたの物語の主人公」というメッセージ性をもとに、バンドメンバー全員の手によって制作された。特に何かの主題歌として制作された訳ではないが、元気づけられるような歌詞とメロディーがコロナ禍で暗くなっていた世の中に刺さり、大ヒットした。Billboardの年間ランキングでは、57位→43位→58位(21年→22年→23年)とTop100をキープし続けており、根強い人気のある楽曲であることが分かる。

主なチャート成績、タイアップ

・Billboard Japan ストリーミング再生数4億回突破

・ダリヤ「パルティ カラーリングミルク」CMソング
・日本テレビ系『スッキリ』”ひとつになろう!ダンスONEプロジェクト’20″課題曲
・「アリシアクリニック」CMソング

曲分析

コード進行については、ChordWiki(ChordWiki : コード譜共有サイト 〜無料の歌詞とコードをシェアしよう)を参照しています。
また、著者の勉強不足により説明が間違っている箇所がある可能性がございます。見つけた場合は、お問い合わせフォームでご指摘いただけると助かります。

キーはA♭、BPMは138です。

イントロ1

ⅣM7 | Ⅳm6 | Ⅲm7 Ⅲ7/Ⅴ# | Ⅵm Ⅴ#aug Ⅰ/Ⅴ Ⅳ#m7-5 | Ⅱm7 | Ⅴ9sus4 | Ⅰ
今なんじゃない? メラメラとたぎれ 眠っているだけの正義 こんな僕も君のヒーローになりたいのさ

イントロのメロディーとコードは、サビを短縮したものとなっています。

そしてこの曲全体的に言えることですが、意外とコードが複雑です。一つ一つ見ていきましょう。

まずサビはⅣ始まりで、その後シンコペーションでⅣm6に向かいます(上図のコードチェンジのタイミングはわかりやすいように拍の頭にしてあります)。このコードはサブドミナントマイナーでありJpopによく見られるコードではありますが、サビの頭でⅣ→Ⅳmという流れは珍しい様に思えます。

そしてⅢ7/Ⅴ#は次のⅥmに対するセカンダリードミナントですが、最初に普通のⅢmを置いた後にⅢ7が置かれています。また、Ⅵmへの流れをスムーズにするように、転回形の分数コード(ここでは、第三音のG#がベースに置かれている)になっています。

4小節目はクリシェになっています。ⅥとⅤの間は普通Ⅴ#dim(パッシングディミニッシュ)とかで繋ぐイメージですが、ここではⅤ#augが使われています。Ⅴ#aug(ソ#、ド、ミ) は、Ⅵm(ラ、ド、ミ)と一音しか変わらないため結構なめらかに聞こえます。その後は単純なⅤではなくⅠ/Ⅴになっています。

その次はⅣ#m7-5が使われています。このコードはJpopでは時々みかけるノンダイアトニックコードで、安定感(トニック感)のあるオシャレなコードとなっています。クリシェの中でのⅣ#m7-5というのは、Official髭男dismの「Pretender」という曲のBメロでも登場しています。

イントロ2

Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ Ⅴaug9 | ⅠM9 | Ⅰadd9/Ⅲ Ⅲaug7 | Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ Ⅴaug9 | ⅠM9 | Ⅵm7
(lalala…)

コード進行が複雑すぎて、イントロを二つに分けざるを得ませんでした。

なんですかこのナインスとセブンスの量。オーギュメントも多いし。

個人的にテンションコードはおまけ程度だと思っているので、このブログではあまり深く触れないつもりです。なのでそれ以外のところを見ていきたいと思います。

黄色いマーカーの部分は大きく見てツーファーブワンになっていますが、ⅡmとⅤの代打にⅣ/Ⅴが挟まっており、ⅤはⅤaugにリハーモナイズされています。また、Ⅱmの前にはⅢaug7が経過音的に挿入されており、Ⅰadd9/ⅢはⅠM9とⅢaug7をなめらかに繋ぐ役割を果たしていると考えられます。Ⅲaug7はⅠadd9/Ⅲのソがソ#になっただけであるため、珍しいコードではありますが、かなりなめらかに聞こえます(Ⅰadd9/Ⅲ→Ⅲaug7→Ⅱm9は一種のクリシェといえます)。

一番-Aメロ

Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ Ⅴaug9 | Ⅵm7 | Ⅵm9 Ⅵm7 |Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ Ⅴaug9 | Ⅵm7 | Ⅲaug7
かっこいい君には 僕じゃ頼りないのかなんて そりゃそうだよなだって 今もこうして迷ってる

AメロはⅡm始まりです。3、4小節目ではずっとⅥmになっていますが、テンションによって微妙にコードチェンジされています。

最後のⅢaug7はイントロ2と同じように、次のⅡmへと半音で繋ぐ役割を果たしています。

一番-Bメロ

Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ | ⅠM9 | Ⅰadd9/Ⅲ Ⅲaug7 | Ⅱm9 | Ⅰ/Ⅲ | Ⅳ | Ⅳ/Ⅴ
(lalala…) 手を取ってくれないか (lalala…) ギブとテイクさ (lalala…) 君が僕のヒーローだったように

Bメロのコードはイントロ2のコードとほぼ同じです。ただBメロはイントロ2とは違って、手拍子が入っているためかテンションが上がります(音楽理論のテンションじゃないよ)。

二回目の繰り返しから後は黄色マーカーで示したように、Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと上がっていく進行になっていますが、ⅢmはⅠ/Ⅲに、ⅤはⅣ/Ⅴに置き換わっています(いずれもよく見るコードです)。

一番-サビ

Ⅱ9/Ⅳ# | ⅣM7 | ⅣmM7 Ⅳm6 | Ⅲm7 | Ⅵm7 | ⅣM7 | ⅣmM7 Ⅳm6 | Ⅶm7-5 Ⅲ7 | Ⅵm7 Ⅴm7/Ⅶ♭
今なんじゃない? メラメラとたぎる こんな僕にも潜む正義が どうしようもない 衝動に駆られて ほら気づけば手を握っている

ⅣM7 | ⅣmM7 Ⅳm6 | Ⅲm7 Ⅲ7/Ⅴ# | Ⅵm9 Ⅰ/Ⅶ♭ | Ⅱm7 | Ⅳm7 | Ⅰ
いったいぜんたい そんなに荷物を 背負い込んでどこへ行くの ねえねえ待って 僕にちょっと 預けてみては?

サビの直前にはⅡ9/Ⅳ#というコードが挿入されています。セカンダリードミナントでもないしドッペルドミナントでもないので役割は不明ですが、アクセントとして入れているのではないかと思います。

途中の赤マーカーの部分は一応強進行(4度上行)になっています。Ⅶm7-5はダイアトニックコードですが意外と登場回数は少ないです。Ⅲ7はⅥmへのセカンダリードミナントです。

二回目の繰り返し部分はイントロ1とほぼ同じですが、クリシェは登場せず、Ⅵm→Ⅰ/Ⅶ♭という流れになっています。Ⅰ/Ⅶ♭Ⅰ7/Ⅶ♭の間違いじゃないかと思うんですけどよく分かりません。

ラストのツーファイブワンは、ⅤがⅣm(サブドミナントマイナー)に置き換わっておりちょっとさみしい感じになっています。

二番-Aメロ

Ⅱm9 | Ⅱm9-5 | ⅠM9 | Ⅲm7 Ⅲaug | Ⅱm9 | Ⅲ7 | Ⅰadd9 | Ⅲ7
信じてばかりの僕と 信じることが怖い君と どちらが正しいのかなんて誰にも分からないさ

さて二番ですが、Aメロは一番とは雰囲気が全く異なります。

コード進行も非常に珍しいものになっています。途中にⅢ7やらⅢaugが何回も登場しますが、いずれもセカンダリードミナントではありません。何なんでしょうかこれは。

途中のⅡm9-5は同主調からの借用和音ですが、ここでは部分転調したというよりは、Ⅱmから微妙にニュアンスを変化させた、といった具合な気がします。

二番-Bメロ、間奏

Ⅱm9 | ⅣM7/Ⅴ | ⅠM9 | Ⅰadd9/Ⅲ Ⅲaug7 | Ⅱm9 | Ⅰadd9/Ⅲ | Ⅳm6 | Ⅳ/Ⅴ Ⅴ9
(lalala…) 僕らだけの世界 (lalala…) ギブとテイクさ (lalala…) 補い合えた暁には 同じ夢を見たい

Ⅳ7 | Ⅴ#aug | Ⅵm7 (三回繰り返し) ・・・ | Ⅱm7 Ⅲm7 Ⅳm7 Ⅶ♭7 Ⅴ#/Ⅶ♭

二番のBメロは一番のBメロとほぼ同じです。

間奏やギターとシンセサイザーの音色が目立つロックな雰囲気に一転します。

間奏ラストの3つのコードは全て同主調平行調からの借用和音です。これらのコードは同主調平行調においてはⅡm→Ⅴ→Ⅳ/Ⅴなので、次の大サビで転調することを予感させます。

Cメロ(大サビ)

案の上、同主調平行調であるFメジャーキーに転調します。

ⅣM7 | Ⅳm6 | Ⅶm7-5 Ⅲ7 | Ⅵm7 | Ⅱm7 | Ⅴ9sus4 | ⅠM7 | Ⅴm7 Ⅰ7
君はかっこいいと苦しめて ひとりぼっちにさせたのは少し 僕のせいなんだよな ごめんね

Ⅳm6 | Ⅶ♭7 | Ⅱ#M7 | Ⅲm7-5 | Ⅳm7 | Ⅳ7/Ⅵ | Ⅶ♭7sus4 | Ⅶ♭ | Ⅲsus4 | Ⅲ
だけど見るべきはリアルだ 今こそ僕が救(たす)けるんだ 抱えないで信じて頼ってほしいんだ

大サビの前半では、サブドミナントマイナーのⅣmや強進行のⅦm7-5→Ⅲ7、ドミナント感の弱いⅤmなど、情緒あふれるノンダイアトニックコードがたくさん出てきます。それに併せて曲調もやや寂しい感じになっています。

問題はその後です。Ⅰ7からのⅣmで明るい雰囲気に戻っていきますが、なんとなく転調したような感じに聞こえます。調べてみると、どうやらDメジャーキー(Fメジャーキーの同主調平行調)に転調しているようです。Dメジャーキーにおけるコードに直して表記すると以下のようになります。

Ⅱm7 | Ⅴ7 | ⅠM7 | Ⅰ#m7-5 | Ⅱm7 | Ⅱ7/Ⅳ# | Ⅴ7sus4 | Ⅴ
だけど見るべきはリアルだ 今こそ僕が救(たす)けるんだ 抱えないで信じて頼ってほしいんだ

ツーファイブワンを繰り返したような進行になっています。Ⅰ#m7-5だけ正体不明ですけどね。このコードだけまた別の調から借用しているのでしょうか。

Ⅱ7/Ⅳ# はドッペルドミナントであるⅡ7を転回させたものです。

ラスサビ

キーはA♭メジャーキーに戻ります。

ⅣM7 | Ⅳm6 | Ⅴ/Ⅳ | ⅣM9 | ⅣM7 | Ⅳm6 | Ⅶm7-5 Ⅲ7 | Ⅵm7 Ⅲ7/Ⅴ# Ⅰ/Ⅴ Ⅳ#m7-5
今なんじゃない? メラメラとたぎる こんな僕にも潜む正義が どうしようもない 衝動に駆られて ほら気づけば手を握っている

ⅣM7 | ⅣmM7 | Ⅶm7-5 Ⅲm7 | Ⅵm9 Ⅰ/Ⅶ♭ | Ⅱm7 | Ⅳm7 | Ⅰadd9 | Ⅱm7 | Ⅳm7 | Ⅰadd9
ほっておけない そんなに荷物を背負い込んでどこへ行くの ほんのちょっと 僕にちょっと預けてみては? こんな僕も君のヒーローになりたいのさ

ラスサビのコード進行はサビとほとんど同じですが、一部変化を持たせています。

黄色い部分はクリシェになっていて、イントロ1と非常に似ていますが、二番目のコードがⅤ#augではなくⅢ7/Ⅴ#になっています(個人的にはこっちの方が使われるイメージ)。

また、二回目の繰り返しでは、今までのサビではⅢm7→Ⅲ7/Ⅴ# だったのがⅦm7-5→Ⅲm7 に変わっています。これは7→3→6という進行であり、平行調マイナーキーにおけるツーファイブワンとなっています。

ラスサビの1段目の部分ではボイチェン?が使われていて面白いですね。遊び心を感じます。

まとめ

今回は緑黄色社会「Mela!」を分析してみました。

今後も様々な曲の分析をあげていこうと思っているので、ぜひご覧ください。

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