このブログでは、J-popの様々な名曲を、コード、メロディー、リズム、歌詞などのいろいろな観点から分析しています。
今回は、Adoの「ギラギラ」という曲を分析していきます。
曲紹介
基本情報
2022年1月26日リリース。タイアップなどは特になし。
作曲は有名ボカロPであるてにをはが担当。Billboard週間チャートではチャートイン2週目にして12位を記録し、その後も13週までトップ20をキープした。ストリーミング再生回数は2億回を突破しており、Adoの楽曲としては6番目に多い楽曲となっている。YouTubeのMV再生数は1.7億と、かなり回っている印象。
曲分析
コード進行については、ChordWiki(ChordWiki : コード譜共有サイト 〜無料の歌詞とコードをシェアしよう)を参照しています。
また、著者の勉強不足により説明が間違っている箇所がある可能性がございます。見つけた場合は、お問い合わせフォームでご指摘いただけると助かります。
キーはBマイナー(=Dメジャー)、BPMは96です。
以下のコードは、Dメジャーキーに合わせて表記してあります。
イントロ
Ⅵm Ⅳ/Ⅵ | Ⅴ Ⅲ/Ⅴ# | Ⅵm Ⅳ/Ⅵ | Ⅴ Ⅲ/Ⅴ# | Ⅵm7 Ⅳ | Ⅴ Ⅲ | Ⅵm7 Ⅳ | Ⅴ Ⅲ
この曲全体に言えることですが、めちゃくちゃ小室進行(6451進行)が使われています。ただ、単純な小室進行の連続ではなくアレンジが様々に加えられています。
例えば最初の小節では、Ⅳの代わりにベース音を維持したⅣ/Ⅵが使われています。ベース音の維持はよくあるアレンジですが、こうすることでやや落ち着いた雰囲気の進行になります。また、2小節目ではⅠに着地する代わりにⅢ/Ⅴ#とし、次のⅥmへのセカンダリードミナントかつベースの半音進行でスムーズに繋いでいます。
Aメロ
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅲ
あーもう本当になんて素晴らしき世界 んで今日もまた己の醜悪さに惑う
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅵm7
だのに人を好きって思う気持ちだけは 一丁前にあるから悶えてるんでしょう
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅲ
Ugly正直言って私の顔は そう神様が左手で描いたみたい
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm7
必然この世にあるラブソングはどれひとつ 絶対私向けなんかじゃないでしょう
Aメロのコード進行も変わらず小室進行が主体になっています。Ⅰの後はそのままⅣにいっても全く違和感はないのですが、ここでは経過音としてⅤ/Ⅶが挟まっています。また、ずっとⅥm始まりのため、区切りの最後はセカンダリードミナントであるⅢになることが多いようです。
最後のⅤ#dimはよくあるパッシングディミニッシュです。
Bメロ
Ⅵm Ⅰ | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm Ⅴ | Ⅵm Ⅰ | Ⅴ Ⅵm
使い道のないくちづけ 憐れみを恣に
ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm7 | ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅵm7
スパンコールの瘡蓋(かさぶた)で身を守る 愛されないくらいなんだ
Bメロは特に変わったコードは出てきません。
サビ前半
サビでDメジャーからFメジャーに転調します。(同主調平行調転調)
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | Ⅱm Ⅰ/Ⅲ Ⅴ/Ⅳ Ⅵm/Ⅲ | Ⅶ Ⅰ# Ⅱ Ⅲ | (Ⅵm7)
ギラギラ 輝いて私は夜を吞み Rap Tap Tap Tap 今に見てろこのluv
「ギラギラ」というフレーズで始まる感じ、Pretenderの「グッバイ」と似てますよね。やっぱりサビ頭に印象的なフレーズが入ると脳に強烈な印象を残すんでしょうねぇ。
最初の2小節は変わらず小室進行です。赤マーカーで引いた「Rap Tap Tap Tap」の部分では、歌詞のリズムに合わせて四分ごとにコードが変わります。下がっていくメロディーに逆行するようにコードが亜上がっていく感じがとても心地良いですね。ですが単純な順次進行(1度ずつ上がる進行)ではなく、分数コードを用いた2→3→5(4)→6という進行になっています。Ⅵm/Ⅲという分数コードは、転回系ではありますがあまり見ないような気がします。
さて、本題はここからです!!!
「今に見てろこのluv」の部分で、急に転調が3回も起きています。
まず、「Rap Tap Tap Tap」までがFメジャーキー。
その後の「今に見」までがBメジャーキー。近親調ではないため、かなり転調のインパクトが強いです。Ⅶ→Ⅰ#はBメジャーキーにおけるⅣ→Ⅴに当たります。
その後の「てろ この」の部分はDメジャーキー。同主調平行調転調です。Ⅱ→ⅢはDメジャーキーにおけるⅣ→Ⅴに当たります。
そして、「luv」で再びFメジャーキーに帰ってきます。これも同主調平行調転調です。直前のDメジャーキーにおけるⅤであるAというコードが、FメジャーキーにおいてはⅢであるため、Ⅵm始まりの小室進行に対してセカンダリードミナントでつなげられるのでかなりスムーズな流れになっています。
この、メジャーコードで階段を駆け上るような進行と、Adoさんの力強いメロディーの上行が合わさって、非常にインパクトのある部分になっています。
サビ後半
Ⅵm7 Ⅱm7 | Ⅴ Ⅵ | Ⅳ Ⅲ/Ⅴ# Ⅱm Ⅰ | Ⅶ Ⅲ| Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ/Ⅴ Ⅰ# Ⅱ/Ⅵ
目に染みるは1mgの花火 Drag on Drag on なんてファニー この世はビザール –ギラ — ギラギラ –ギラ —
サビ後半も小室進行で始まりますが、Ⅳの部分が同じサブドミナントであるⅡmにリハーモナイズされています。また、前半では駆け上がるような進行だった赤マーカーの部分が、Ⅳ→Ⅲ→Ⅱm→Ⅰと下がっていく進行に変わっています。
また、その後のⅦ→Ⅲ→Ⅵmは平行調(Fメジャーキーに対する、Dマイナーキー)におけるツーファイブワンです。
二番-Aメロ,Bメロ
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅲ
Unknownお釈迦様も存ぜぬうちに もう健やかに狂っていたみたい
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ | ⅣM7 Ⅵm7 | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm7
それは世界の方かそれとも私の方ですか? 共生は端からムリでしょう
ⅣM7 Ⅰ | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm Ⅴ | ⅣM7 Ⅰ | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm Ⅰ
マガイモノこそかなしけれ 無我夢中疾る疾る
ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅴ#dim Ⅵm7 | ⅣM7 Ⅰ/Ⅲ | Ⅴ Ⅵm7
強い酸性雨が洗い流す前に 蛍光色の痣(あざ)抱いて
二番のAメロとBメロは基本的に一番と同じです。
同じコード進行の繰り返しだと、どうしても書くことが無くなっちゃうんですよね笑。
こういうときは大抵歌詞の考察に移るんですが、どうしても個人的にボカロの歌詞は解釈が難しいと感じてしまうところがあります。
全てのボカロがそうというわけでは無いですが、日常の場面に即して聴き手にまっすぐ情景が映し出されるようなわかりやすい歌詞、というよりは、韻とか言葉の響きを優先したおしゃれな歌詞が多いような気がします。
小説ではなく、“詩”的な要素が強いのかなという風に私は思います。
二番-サビ
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | Ⅱm Ⅰ/Ⅲ Ⅴ/Ⅳ Ⅵm/Ⅲ | Ⅶ Ⅰ# Ⅱ Ⅲ |
メラメラ火を噴いて私は夜の狼 Rap Tap Tap Tap そこで見てろこの乱舞
Ⅵm7 Ⅱm7 | Ⅴ Ⅵ | Ⅳ Ⅲ/Ⅴ# Ⅱm Ⅰ | Ⅶ Ⅲ
強くおなりあんたなりの武装(メイクアップ)で Flap up Flap up 不意に不安に 孤独は
サビも一番と同じです。
「メラメラ」の声がエッジが効いててめっちゃすこです。
Cメロ
ⅣM7 Ⅴ | Ⅰ Ⅱ | ⅣM7 Ⅴ | Ⅱ Ⅲ | ⅣM7 Ⅴadd9 | Ⅰ Ⅱ | ⅣM7 Ⅴadd9
燃料(ガソリン) 卑屈な町を行く 目を閉じて もういいかい もういいかい もしも神様が左利きなら どんなに幸せか知れない
ドッペルドミナントでもないただのⅡって時々見かけるんですけどどういう役割なんでしょうか??詳しい方教えてください。。。m(_ _)m
ラスサビ
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | Ⅱm Ⅰ/Ⅲ Ⅴ/Ⅳ Ⅵm/Ⅲ | Ⅶ Ⅰ# Ⅱ Ⅲ | (Ⅵm7)
ギラギラ 輝いて私は夜を吞み Rap Tap Tap Tap 今に見てろこのluv
Ⅵm7 Ⅱm7 | Ⅴ Ⅵ | Ⅳ Ⅲ/Ⅴ# Ⅱm Ⅰ | Ⅶ Ⅲ| Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ | Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ Ⅴ/Ⅶ
目に染みるは1mgの花火 Drag on Drag on なんてファニー この世はビザール –ギラ — ギラギラ –ギラ —
Ⅵm7 ⅣM7 | Ⅴ Ⅰ | Ⅵm7 Ⅳ7 | Ⅴ Ⅰ | Ⅵm7 Ⅳ7 | Ⅴ (Ⅵm7)
Give Love 端は満ちて(ギラギラ) ありのまんまじゃいられない 誰も彼も なんて素晴らしき世界だ! ギラついてこう
最後明らかに手抜きみたいな感じになっちゃいましたけど、まぁサビの転調を解説したかっただけなのでお許しください…。
まとめ
今回はAdo「ギラギラ」を分析してみました。
今後も様々な曲の分析をあげていきますので、ぜひ他の記事もご覧ください。
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