YOASOBI 「あの夢をなぞって」 はYOASOBI史上最大の感動作!コード進行と歌詞の意味を解説

曲分析

このブログでは、J-popの様々な名曲を、コード、メロディー、リズム、歌詞などのいろいろな観点から分析しています。

今回は、個人的にYOASOBIの楽曲の中で一番の名作だと思っている、「あの夢をなぞって」という曲を分析していきます。

曲紹介

基本情報

2020年1月18日にリリース。YOASOBIの楽曲としては「夜に駆ける」に続いて2作目のシングルとなる。YOASOBIは「小説を音楽にするユニット」をコンセプトとして掲げており、この曲も小説投稿サイト「monogatary.com」に投稿された、いしき蒼太作「夢の雫と星の花」を原作として制作されている。YOASOBIは2020年に「夜に駆ける」で大ヒットをたたき出して以降、今日にいたるまでたくさんのヒット曲を生み出し続けている。

主なチャート成績、タイアップ

・Billboard Japan ストリーミング再生数3億回突破

・フジテレビ系「とくダネ!」2020年6月度お天気コーナー マンスリーソング
・ダイハツ工業「タフト」”きっといい風”篇CMソング
・大塚製薬株式会社「カロリーメイト」CMソング

本編に入る前に

このページでは、「あの夢をなぞって」の原作小説である「夢の雫と星の花」の若干のネタバレを含みます。ネタバレを避けたい、という方はこちらから読めますので、ぜひじっくりお読みになってから戻ってきてください(ちなみにネット小説にしてはそこそこ長いです)。

小説を読んだ後にMVを見れば、涙腺が崩壊すること間違いなしです・・・。

曲分析

コード進行については、ChordWiki(ChordWiki : コード譜共有サイト 〜無料の歌詞とコードをシェアしよう)を参照しています。
また、著者の勉強不足により説明が間違っている箇所がある可能性がございます。見つけた場合は、お問い合わせフォームでご指摘いただけると助かります。

キーはA♭、BPMは180です。

イントロ

夜の空を飾る綺麗な花 街の声をぎゅっと光が包み込む 音のない二人だけの世界で聞こえた言葉は「好きだよ」

イントロは、ボーカルのikuraさんのソロから始まります。ikuraさんの美しい歌声に思わず心を奪われてしまいます・・・。
歌詞は、物語の核の部分を簡潔にまとめたようなものとなっていますね。

この後のピアノを主旋律としたイントロはめちゃくちゃかっこいいのですが、コード進行自体はこの後さんざん繰り返されるものなのでここでは割愛します。

Aメロ

Ⅰ | Ⅴ/Ⅳ | Ⅴ Ⅴ#dim | Ⅵm | Ⅳ | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅴm6/Ⅶ♭ |
夢の中で見えた未来のこと 夏の夜、君と、並ぶ影が二つ

Ⅳ | Ⅴ | Ⅲ7 Ⅲ7/Ⅴ# | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅰ
最後の花火が空に昇って消えたら それを合図に

Aメロでは、主人公の女の子である双見楓の視点が描かれています。楓は予知夢を見ることができるが、その予知夢通りにならないことが一回でも起きると予知能力は失われてしまう、という特殊な能力の持ち主でした。そしてある日楓は、2週間後に行われる花火大会の最後に、密かに心を寄せていた幼なじみの一宮亮に告白されるという予知夢を見たのです。

最後の花火が空に昇って消えたらそれを合図に、(告白される)という夢を見たわけです。「告白される」という部分をド直球に歌詞に入れないというのも、作曲者であるAyaseさんの工夫を感じます。

コード進行についてですが、この曲では2つの有名進行が何度も登場します。赤マーカーで引いてあるのが「Just the two of us進行」(43651進行)です。丸サ進行ともいいます。黄色マーカーで引いてあるのが「王道進行」(4536進行)です。

Ayaseさんはどうやら、有名進行に経過音を挟むなどのアレンジを加えて使うのが好きなようで、たとえば上のJust the two of us進行ではⅤがⅤm6/Ⅶ♭と、ベースがなめらかに繋がるように分数コードを用いていますし、王道進行ではⅢとⅥmの間にⅢ7/Ⅴ#を挟んでなめらかに繋いでいます。

Ⅴ#dimはⅤとⅥmをつなぐパッシングディミニッシュ、Ⅲ7はⅥmへのセカンダリードミナントです。

Bメロ

ⅣM7 | Ⅴ7 Ⅴ7/Ⅳ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅱm7 | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅴm Ⅰ7 |
いつも通りの朝にいつも通りの君の姿 思わず目を逸らしてしまったのは

ⅣM7 | Ⅴ7 | Ⅲ7 Ⅲ7/Ⅴ# | | Ⅳ | Ⅳ | Ⅴ
どうやったって 忘れられない君の言葉 今もずっと響いてるから

Bメロでは、予知夢を見た直後の学校での様子が描かれています。「いつも通りの君の姿」、これはもちろん一宮亮のことでしょう。予知夢の中で告白されたことがずっと気になってしまい、思わず目を逸らしてしまいます。また、歌詞では描かれていませんが、その後いろいろあって結局一宮が楓に、一緒に花火大会に行く約束を取り付けます。

一個目の王道進行ではⅤとⅢmの間にⅤ7/Ⅳをはさんでなめらかに繋いでいます。赤マーカーは、Ⅳを同じサブドミナントであるⅡmに変えたJust the two of us進行の派生形といえるでしょう。ⅠはⅠ7にし、次のⅣへとつなげています。

2行目では、セカンダリードミナントではないシンプルなが登場しています。メジャーコードがずっと続くことで明るい雰囲気になっています。

サビ

Ⅰ | Ⅲ7 | Ⅵm Ⅴ#dim | Ⅴm | Ⅰ | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ
夜を抜けて 夢の先へ たどり着きたい未来へ 本当に?あの夢に、本当に?って今も 不安になってしまうけどきっと

Ⅰ | Ⅲ7 | Ⅵm Ⅴ#dim | Ⅴm | Ⅰ | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ
今を抜けて 明日の先へ 二人だけの場所へ もうちょっと どうか変わらないで もうちょっと 君からの言葉あの未来で待っているよ

サビでは、楓の心境が描かれています。どうかお願いだから予知夢通りにいって、好きって言って、という心の声が語られています。

サビ頭の「あぁー」はYOASOBIあるあるではありますが、この曲では単なる言葉の埋め合わせなどというものではなく、楓の必死さというか、「あぁお願い」という強い気持ちを感じさせます。

また、サビ頭は弱起ではなく強起(小節の始まりと同時にメロディーが始まる)ですね。Ⅰ始まりというのも相まって、かなり清々しいスタートになっています。

サビもほぼJust the two of us進行×王道進行になっています。ⅥmとⅤの間はパッシングディミニッシュが挟まっています。

間奏

ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | ⅣM7 | Ⅲ Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅶ♭6 | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | ⅣM7 | Ⅴ

間奏ではかっこいいギターソロが入ります。それにしてもYOASOBIは王道進行とJust the two of us進行好きですよね。こんなに同じ進行を使っているにもかかわらず聴き手を飽きさせないというのはなかなかテクニックのいることだと思います。

ただ今までと一カ所だけ違うところがあります。赤マーカーのJust the two of us進行のところで、ⅤのところがⅦ♭6 になっています。Ⅵ→Ⅶ♭→Ⅰは非常になめらかですし、オシャレなアレンジだなと思いました。

Bメロ(二回目)

ⅣM7 | Ⅴ7 | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅱm7 | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅴm Ⅰ7 |
誰も知らない 二人だけの夜 待ち焦がれていた景色と重なる

ⅣM7 | Ⅴ7 | Ⅲ7 Ⅲ7/Ⅴ# | Ⅵ | Ⅳ | Ⅳ | Ⅴ
夏の空に 未来と今 繋がる様に 開く花火 君とここでほら あの夢をなぞる

いよいよ花火大会当日へと場面が切り替わります。夢で見たあの景色が今まさに目の前に広がっています。「未来と今 繋がる様に開く花火」、素敵な表現です。そしてここで、「あの夢をなぞって」というタイトルが歌詞で回収されます。

落ちサビ

Ⅰ | Ⅰadd9 | Ⅲ | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅵm Ⅴ#dim | Ⅴm | Ⅰ | ⅣM7 | Ⅴ7 Ⅴ7/Ⅳ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ・・| Ⅴ#
見上げた空を飾る 光が今照らした横顔 そうずっとこの景色のためにそうきっとほら二つの未来が今重なり合う

二人並んで、打ち上げ花火を見ています。運命の瞬間が、刻一刻と迫ってきています。

落ちサビで静かになることで、二人だけの静かな世界が、緊張感漂う二人の関係が、ありありと映し出されます。

そしてⅤからⅤ#へと移り、転調したことを明確に聴き手に感じさせます。ラスサビの半音上転調は昔のJpopからよく使われてきた手法の一つで、YOASOBIの曲でも極めて頻繁に登場します。物語のクライマックスの演出としてピッタリなんでしょうね。

ラスサビ

キーは半音上に上がってAメジャーになっています。

Ⅰ | Ⅲ7 | Ⅵm Ⅴ#dim | Ⅴm | Ⅰ | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ
夜の中で 君と二人 たどり着いた未来で 大丈夫想いはきっと大丈夫伝わる あの日見た夢の先へ

Ⅰ | Ⅲ7 | Ⅵm Ⅴ#dim | Ⅴm | Ⅰ | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ
今を抜けて 明日の先で また出会えた君へ もうちょっと どうか終わらないでもうちょっと ほら最後の花火が今二人を包む

Ⅰ | Ⅳ | Ⅴ
音のない世界に響いた 「好きだよ」

いよいよ物語もクライマックスです。最後の花火が打ち上がりましたが、一宮は結局告白してくれません。予知夢の通りにはいかなかったのです。けど楓はこのままでは後悔が残ると思い、こらえきれず自分から一宮に告白します(MVの3:27のところで、楓が告白する様子が映っています)。あぁ、予知夢は嘘だったんだ、と思っていると、なぜかもう一発、特大の花火が打ち上がります。

実は、一宮亮も予知能力を持っていたんですね。そして彼は六歳の時に、花火大会の最後に楓に告白される予知夢を見ていました。しかし一宮は、今になって、楓が自分と真逆の予知夢を見ていることを夢で知ります。この二つの矛盾する予知夢をどう実現させるかで悩んだ一宮は、花火職人のもとを訪ね、最後の四尺玉を二発打ち上げて欲しいとお願いしていたのです。

最後、2発目の四尺玉が打ち上げられ、一宮は楓に告げます。「好きだよ」と。

・・・こんなん泣くって。四年ぶりに原作小説を読みましたが、また泣いちゃいました。

まとめ

リリースカットピアノによる美しい裏メロと、ギターによるコードで支えられるハイテンポな展開が非常に爽快でありながら、原作を読んだ人にしか分からない歌詞と物語がその上に乗っかり、さらにラストの転調で感動のクライマックスを演出する・・・これほど衝撃を受けた曲は初めてでした。

ぜひ皆さん、この記事を読んだ後MVを見に行ってみてください。

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